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イタリアに精神科病床は存在しないのか?

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Abstract blur hospital and clinic interior for background
この記事は約6分で読めます。

こんにちは。私は日本人としてイタリアの精神科に入院した、おそらく最初の人です(2020年11月より前に入院された日本人がいたら、気になるのでそっと連絡をください)。そのため、当事者として「イタリアの精神科」の現実を、ある程度知っていると言うことができます。

結論を先に言うと、「イタリアに精神科病床(精神科の入院施設)は存在しない」という情報は、間違っています。私は確かに、「イタリアの精神科」に入院していたのです。このカテゴリーに関わる間違った情報や誇張された情報はかなり多いです。

イタリアに存在しないのは「マニコミオ(manicomio)」である

マニコミオとは「精神病院」と訳され、イタリアにかつて存在していた精神科の形態です。1996年にマニコミオはイタリアから消えました。マニコミオは精神科単科の病院です。マニコミオにはほかの診療科(内科、外科、眼科など)は存在しません。マニコミオは閉鎖的な環境で、不祥事はたくさんありました。孤児だったため、精神科の診断なしにマニコミオに幽閉された人もいます。電気けいれん療法などが治療ではなく懲罰として行われていました。なお、電気けいれん療法はイタリア人が考案したもので、賛否両論があります。
そのため、「イタリアに精神病院が存在しない」ということは、マニコミオ(=精神科単科病院)においては正しいのです。

イタリアの精神科の根幹をなす「180号法(バザーリア法)」

フランコ・バザーリアさんという精神科医によって作られた法律が180号法、通称「バザーリア法」と呼ばれるものです。その法律ではマニコミオの廃止と、SPDCという私が入院していた精神科(後述)について規定しています。
この法律では、「義務的治療(TSO: (trattamento sanitario obbligatorio)」の方法についても記載しています。TSOは日本の医療保護入院や措置入院などに相当します。コムーネを通じて行われること、TSOの実施には2名の精神科医の許可が必要であることが書かれています。TSOが行われる状況としては、「延期できない必要性と緊急性」が必須項目となっています。さらに、「患者さんが治療を拒否している(rifiuti il trattamento)」ことと「入院以外の選択肢がない(non sia possibile prendere adeguate misure extraospedaliere)」ことが条件です。TSOは最大7日間行われますが、患者さんの状態によって延長されることもあります。イタリア憲法32条の内容にもかかわってくる内容です。
以下、引用します。

”La Repubblica tutela la salute come fondamentale diritto dell’individuo e interesse della collettività, e garantisce cure gratuite agli indigenti. Nessuno può essere obbligato a un determinato trattamento sanitario se non per disposizione di legge. La legge non può in nessun caso violare i limiti imposti dal rispetto della persona umana.”

訳は以下です。

国は、個人の基本的権利として、また地域社会の利益のために健康を保護し、貧しい人々に無料の医療を保証します。 法律による場合を除いて、特定の健康治療を義務付けることはできません。 法律は、いかなる状況においても、人間を尊重することによって課せられる制限に違反することはできません。

引用: イタリア上院 https://www.senato.it/istituzione/la-costituzione/parte-i/titolo-ii/articolo-32

SPDC( 診断と治療のための精神科サービス )とは何か

では、この記事の根幹であるSPDCについて話していきます。SPDCはServizio Psichiatrico di Diagnosi e Curaの略で、「診断と治療のための精神科サービス」と訳されます。細かいことですが、定冠詞はloを使います。SPDCがあるのは総合病院なので、必要な場合には、ほかの診療科と連携した治療が行われます。そのため、例えば目の病気があり薬がなくなった場合は、入院中に眼科の診察を受けることができます。318のSPDCがイタリア全土に存在し、3981床の入院病床があります。参考までに、日本には33万床の精神科病床があります。これは世界有数の高い水準です。
先ほど書いた180号法(バザーリア法)により、SPDCの限度は15病床と決められています。私が入院していた病院(S. Salvatore病院)にあるSPDCは2階建ての1階にありました。病棟内を散歩したときに14床しか病床がなかったので、看護師さんに「この精神科は小さすぎます。きっと病院内に精神科病床がほかにあるはずです。2階は重症者や受刑者などのための精神科病床ですか?」と聞いたところ、「ラクイラにあるSPDCはこの14床だけだよ。2階は別の病棟だよ」と言われたので、本当にびっくりしました。それは日本ならまず不可能な快挙です。なお、ラクイラは震災の影響で精神科に関わる人(医療従事者、患者さんなど)が多いのだろうと思っていたら、まったくそんなことはありませんでした。

イタリアの精神科への幻想

事実として、イタリアの精神科は特別な場所ではありません。世界最先端の驚くべき画期的な治療が行われるわけでもなければ、一瞬で病気を治すような素晴らしい薬があるわけでもなければ、高級ホテルのような素晴らしい施設と待遇が待っているわけでもありません。一部の人はイタリアの精神科が天国のような場所だと幻想を抱いているようですが、それは違います。しかし、そこは劣悪な場所ではありませんでした。病院は清潔で、料理はおいしく、診察は丁寧で、患者さんとの交流ができ、私にとって言うべき不満は何もありません。最高の医療を無料で提供してくれた彼らに、心から感謝しています。
イタリアに限らず、精神科は必要とする人が行く場所です。インフルエンザになったら病院に行くのと同じで、心を病んだら精神科に行く、ただそれだけです。

さいごに

ここまで読んでくださってありがとうございます。

一番助けになったのは、この病棟で出会った友人の支えです。彼と私は知り合ってから1日も欠かすことなく、毎日些細なことでメッセージをしあいました。「知り合って1年になるね!知り合えてとっても嬉しいよ」とメッセージを貰ったときにはとっても嬉しかったです。精神的な困難を持つ者として、それ以前にひとりの人間として、彼は私の良き理解者であり、パートナー(恋愛的な意味を含みません)です。

彼に出会えたことを神様に感謝いたします。

参考になるリンク

https://www.infodata.ilsole24ore.com/2019/10/14/salute-mentale-numeri-dellofferta-psichiatrica-pubblica-italia/ (イタリア語)

https://kaigo.ten-navi.com/article/50 (日本語)

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