こんにちは。ほのかです。
今回は2度の精神科への入院を経験した私が、その経験をもとに「精神科への入院におけるメリットとデメリット」について語っていきます。
では、はじめます。
精神科に入院するメリット
1.ゆっくりと静養できる環境が整えられている
精神科に限ったことではないですが、病院には余計なものがありません。私が入院していた病院には、病室にはナースコールとトイレとシャワー以外何もなく(時計すらありません)、居間にテレビと時代遅れの数冊の本があるだけです。なお、本が時代遅れなのは看護師さんがネタにしていました。「こんな古い本しかないけど、面白い本だからぜひ読んでみて」と言われました。しかし、私にとっては有意義なイタリア語の勉強になったのでありがたかったですが、病状の関係で、本をじっくり読むことはできませんでした。
さらに、入院してもすることややるべきこともほとんどありません。2回目に入院したときに週3回、各1時間程度、精神科で働きたい学生(仕事の名前は忘れました)が薬の使い方や精神疾患についての講義をしていましたが、毎日の診察と食事以外にすることはありません。そのため、ゆっくりと静養することができます。余計な刺激もありません。そのため、比較的健康な人が入院すると退屈してしまうのも頷けます。
2.精神疾患について心置きなく話せる友人ができる
私は2人の友人を作ることができました。そのうちの1人とは毎日のように連絡を取り合い、特に病気のことを偏見を恐れずに話すことができます。彼に出会えたのは本当にありがたいことでした。もちろん、病棟にいる全員が優しい人とは限りませんが、全員何らかの精神的困難(disagio mentale)を持っている人です。そのため、友達を作るときに余計な心配をしなくて済むのは大きなメリットでしょう。
しかし、友人を作るだけなら自助グループでも十分可能です。自助グループはFacebookで探すのが良いですよ。私は日本、英語圏、そしてイタリア人の自助グループに参加していますが、毎日有意義な情報を得ることができます。日本の自助グループの人とはオフラインイベントで会ったこともあります。
3.毎日診察が受けられ、必要な医療が提供される
私が入院していた病棟は、毎朝午前中に精神科医(psichiatri)5名程度が病室に入り、診察を受けるシステムでした。病床がバザリア法(Legge Basaglia: 180号法とも)の影響で14床しかないし満床でもないため、看護師さんや医療従事者(operatore sanitario)も含めると、患者さんよりも医療従事者のほうが人数が多いという奇妙な病床でした。日本では精神科特例があるため、ありえない話です。なお、なぜ彼らが精神科医だとわかるかというと、服の色が違うからです。私が入院していた病院では、精神科医は緑色、看護師さんは赤色、医療従事者は青色の服を着ていました。分かりやすいシステムです。
余談ですが、精神科は2階建ての建物の1階にあったので、てっきり2階も精神科の別の病床(たとえば慢性期の方)なのだろうと思っていたら、看護師さんに「精神科はこの14床だけだよ」と言われてかなり驚きました。「日本には500床程度の病院もあると伝えると今度はその看護師さんがびっくりしていました。
話がそれましたが、毎日診察が受けられるということは、通院では言い切れないことや伝えきれないことも言えるということです。しかも、必要なら適宜看護師さんや精神科医と話すこともできますので、体調が悪くなってもすぐに支援を受けることができます。
4.入院しないと受けられない医療を受けられる
バザリア法が制定されたあとのイタリアではほとんど使われていないようですが、電気けいれん療法(terapia elettroconvulsivante: TECと略される)を使うため、クロザピンという統合失調症の薬を使うためなどの理由で、入院が必要になるか、入院したほうがよいと判断される場合があります。
余談ですが、電気けいれん療法を発見したのはイタリア人です。そのため、精神病院(マニコミオ: manicomio)では多く使われていたと、精神医療に関わる知人から聞きました。
さらに、薬の調整などでも入院したほうがよいと判断される場合もあります。
しかし、精神医療の進歩により、「入院しないと受けられない精神療法」は少なくなってきています。
精神科に入院するデメリット
1.お金がかかる
複数の病院を調べてみたところ、精神科への入院にかかる費用は、1か月につき、安くても10万円、高くて40万円という結果になりました。これは自立支援医療や障害者手帳を持っていなく、所得が十分にある場合と仮定しています。
しかも、入院している間は働くなどして収入を得ることができません。
なお、イタリアの場合は、保険証(tessera sanitaria)を持っていなくても公立の病院であれば無料で利用でき、薬代も食事代もかかりません。
2.何かと制約が多い
まず、アルコールが飲めません。これはお酒が大好きな私にとってつらかったことのひとつです。
次に、好きなものを食べられるわけではありません。メニューは選べましたが、それでも限界があります。私の場合食事の量が足りなかったので、外部からの食べものは神様のように見えました。友達とお菓子を分け合って食べたのは、パーティーのような素晴らしい経験でした。
さらに、閉鎖病棟なので外出ができません。閉鎖病棟というのは、外に出るための扉が閉ざされていて、患者さんの判断では外に出られないという意味です。つまり、外に出られるのは退院するとき、外出や外泊をするときとなり、それには医師の許可が必要です。後述しますがイタリアは入院日数が少ないため、外出や外泊はまずしません。
また、たばこの場合は喫煙室があり、私以外の全員が吸っていました。娯楽がないので、喫煙も立派な楽しみになるのです。
3.環境が変わりストレスになる
特に発達障害のある方の場合、環境が変わるということは大きなストレッサー(ストレスを引き起こす要因)になります。
また、不眠症の方は、慣れている環境で眠れないため不眠症がひどくなる可能性もあります。追加の眠剤を貰うにも許可が必要で、そう簡単には貰えません。
慣れるまでの最初の1週間は、戸惑うことのほうが多いでしょう。
4.娯楽が少なく退屈
たばこを吸うことが娯楽になってしまうように、娯楽が少ないです。精神科に限ったことではないですが、病院という無機質な環境では、体調が良くなって起きられる時間が長くなってくるとどうしても退屈してしまいます。テレビと数冊の本と患者さんとのおしゃべり以外にすることはありません。体調が良ければ、中庭を散歩させてもらえます。それ以外の時間は、病棟内を散歩していますが、先程も書いたように14床しかないので病棟は狭く、3分もあれば1周できます。
食事が美味しかったのが救いでした。
参考記事

さいごに
私を受け入れてくれた病院には感謝しかありません。結果としてデメリットよりもメリットのほうが大きかったですが、それは短期(20日)の入院で済んだからだと思います。私は長期入院、社会的入院(病状が落ち着いて退院できるのに、社会に受け皿がないために退院できずにいること)が起きない仕組みがちゃんとできているイタリアの精神医療を見習ってほしいと思います。
精神病床の平均在院日数は274.7日(全病床:平均在院日数29.1日) 過去10年間で精神病床の平均在院日数は、52.5日短縮。 他方で国際的には日本の平均在院日数は非常に長い。
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000462293.pdf
近年の新規入院患者の入院期間は短縮傾向にあり、約9割が1年以内に退院。
このような資料がありますが、1割の患者さんが1年以内に退院できないのは、やはり社会に、地域に精神疾患のある方を受け入れる場所や仕組みがまだまだないからなのでしょう。
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