はじめに
こんにちは。ほのかです。今日はイタリアの医療にお世話になった恩返しとして、この記事を書いていきます。これからイタリアに来られる外国人の方や、イタリアの精神医療に関心のある方に読んでいただければ幸いです。日本語で書かれているイタリアの精神医療に関する情報は、誇張されていたり理想化されていたりするものが多く、当事者としてはあまり参考にはなりませんでした。
なお、この記事は私がイタリア中部・ラクイラにある総合病院であるSan Salvatole病院の精神科に2020年11月に入院した際の経験をもとに書いています。
イタリアの精神科
イタリアの精神科には、日本ではクリニックや通院治療に対応する「精神保健センター」(Centro di Salute Mentale: CSM)と、入院病棟を持つ「診断と治療のための精神科サービス」(Servizio Psichiatrico di Diagnosi e Cura: SPDC)などの施設があります。今回紹介するのは後者です。
SPDCでは、社会的入院や長期入院を防ぐために、さまざまな取り組みがされています。
ここで統計学的なデータ(https://www.infodata.ilsole24ore.com/2019/10/14/salute-mentale-numeri-dellofferta-psichiatrica-pubblica-italia/#:~:text=Pi%C3%B9%20nel%20dettaglio%3A%20in%20Italia,per%20ricoveri%20in%20day%20hospital.)を紹介します。イタリア全土に318のSPDCがあり、イタリア全土に3981床の精神科の病床があります。
入院までの流れ
入院する場合は、救急外来(Pronto Soccorso)を経由してその場で入院が決まるか、かかりつけ医の判断のもとで入院が必要とされて入院する場合の2通りあります。前者の場合は、24時間入院することができます。私の場合は、前者でした。イタリアで救急車を呼ぶための番号は118です。
そもそも、いきなり救急外来に行ったわけではありません。11月6日の未明、イタリアにある自殺相談ダイヤルに私がチャットをして、オペレーターの方と1時間程度話していたのですが、その結果「このままだとあなたの安全が危ないので、救急車を呼んで良いか?」という話になりました。チャットをするにあたって、「オペレーターが危険と判断した場合には、適当な処置を取らせてもらう」という利用規約に準じた判断です。私は「このままだと入院が決まるだろうな」と思い、必要だろうと思われたものを持って救急車に乗りました。
ここからはあくまでも私の感覚ですが、精神疾患に限らず、イタリア人は日本人よりも比較的簡単に救急車を呼ぶと思われます。「医師に診てもらって、処置が不要ならそのまま帰ればいい」という理由から、イタリア人はそう判断するようです。さらに、これは精神科とは関係がないのですが、座ったまま寝ていたら「体調が悪いのか?救急車でも呼ぼうか?」と声をかけられたときにはびっくりしました。これらは、後述する医療費に関する問題にも密接に関わってくるでしょう。
11月6日の朝、救急外来で精神科医の診察を受け、入院が必要と判断され、そのまま病棟に向かいました。閉鎖病棟です。なお、精神医療における「閉鎖病棟」とは、病棟内外を自由に行き来できず、医療従事者によってのみ、病棟の扉が開けられる病院」という意味です。そのため、たとえば精神科病棟から出て散歩するなどということはできず、精神科病棟内を散歩することになります。精神科病棟に入院している患者さん専用の中庭もありますが、そこに行くためには医療従事者の許可が必要です。病室に入ってから、私は朝ごはんを食べていないことに気が付きました。その後看護師さんが朝ごはんを持ってきてくれました。コーヒー牛乳とパンでした。
参考までに、私が入院していたSan Salvatole病院を管轄する、日本の保健所にあたる機関(Azienda Sanitario Locale: ASL)であるASL Abruzzo 1の場合は、看護師さんが赤い服を着て、お医者さんが緑色の服を着て、その他の医療従事者の方が水色の服を着ていました。そのため、すぐにお医者さんと看護師さんを見分けることができます。参考までに、ASLをGoogle翻訳にかけると「地方保健局」という訳が出てきました。
医療費について
私は当時、滞在許可証(Permesso di soggiorno)を持っていませんでした。イタリアでは、滞在許可証を申請してから実際に手元に来るまでには時間があり、私が入院したのは滞在許可証を申請しているときでした。そのため、私は保険証(tessera sanitaria)を持っていませんでした。さらに精神疾患は持病なので、滞在許可証を申請する際に義務として入った日本の医療保険では保険金がおりません。
イタリアの保険制度(Servizio sanitario nazionale: SSN)では、たとえ外国人であろうと、原則イタリアでは医療費はかかりません。入院中の食事や薬代なども、私は一切払っていません。
滞在許可証などがない外国人の観光客であろうと、医療費はかからないとされています。
そういうわけで、私は全くお金を払っていません。私はイタリアに住んで税金を払うことと、この経験を伝えていくことくらいしか、イタリアの医療従事者に恩返しをする方法がないので、私はこの記事を書きました。ご覧下さりありがとうございました。
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