こんにちは。私の友人達の一部はSAEと呼ばれる仮設住宅に住んでいます。SAEとはSoluzione abitativa in emergenzaつまり「緊急時の住宅ソリューション」とでも訳せます。これは2016年のイタリア中部地震に対する仮設住宅の呼び名です。他の地震においてはまた別の名称が使われるのですが、それについては今回は割愛します。
SAEの問題点はいくつもありますが、その最たるものが冬季の停電でしょう。SAEがある地域、つまり2016年の震災の被災地は冬季になると降雪し、それが影響して停電してしまうのです。当然ですが、停電することで室温も氷点下になり、灯りも温かさもない夜を過ごさなければならないのです。SAEはまさに無慈悲で非人間的な環境になります。SAEには高齢者が多く住んでいますが、彼らはほかの地域に頼れる人がいるわけでもなく、病院にも行けず、何よりも不健康な生活を強いられます。また妊婦さんなど脆弱な環境に置かれると、近くには病院がないため、救急車の到着も遅れ、文字通りの命取りになりかねません。
私の友人のSilviaさんは、SAEよりも迅速に作られた(つまり、その分脆弱です)住宅であるMapreに住んでいますが、そこでも度々停電が起き、酷い場合には17時間程度も停電することがあるようです。日本の仮設住宅では、こんなに長期間、しかも頻繁に停電するということはあり得ません。それは被災者に対し政府が無関心な証拠であるように私には思えます。実際、当時の首相(Matteo Renzi首相)は「あなたたちをひとりにしない」 (non vi lasciamo soli)という言葉を残しましたが、この状況を見ればその言葉が本当かウソかはすぐわかります。
ジャーナリストとして被災地を取材しているGiulia Scandolaraさんが言っているように、この問題は被災者全員の尊厳、人間性、ひいては人権にかかわる重大な問題です。しかし、被災地以外の地域ではさほど関心を持って取り上げられていないようです。私は現在イタリアにいないので、それがイタリア全土のニュースとして取り上げられたかを知ることはできませんが、少なくともSAEが停電したというニュースを報じるのはもっぱら地方紙です。そのため「もう復興したんじゃないの?」というような声を聞くこともありますし、まして外国人にはそのような情報は行き渡りません。これが私がブログを書き続ける理由のひとつです。イタリアは難民のニュースを扱っていることが多く、彼らの人権には多くの人が注視しますが、イタリア人自体のことについてはあまり知られていません。「難民よりイタリア人が大事」と言いたいわけではありませんし、実際それを言っている政党は反移民政策を掲げる排他的な政党です。しかし、イタリアがイタリア人自体に対してこれほど冷酷でよいのか、私は疑問に思います。



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